牧会コラム週報版 199 2024.9.8
199「ダビデとヨナタン5」
サウルは一度はヨナタンに、ダビデを殺さないことを約束しましたが、悪霊に取りつかれたサウルはダビデを槍で串刺しにしようとしました。サウルの魔の手から逃げたダビデはヨナタンのもとに来ます。ダビデはヨナタンに、あなたの父上は私のことを殺すつもりだと訴えました。それを信じられなかったヨナタンは、そのような重大なことはまず私に聞かせるはずだ、そういうことがない以上、あなたが殺されるはずはない、と答えました。しかしダビデは、王があなたにお告げにならないのは、あなたを悲しませないためだ、実際の私は、ほんのあと一歩で死ぬところに追いやられている、と切々と訴えます。
ここでようやく、ヨナタンは父であり王であるサウルに対する忠誠を無批判に誓うことがみこころではない、未来のイスラエルの王として立てられるべきダビデのいのちを生かすことこそがみこころであると悟り、ゆえに王の意志に抗うことも辞せずに行わなければならない、と覚悟を決めました。そしてヨナタンはダビデに、「あなたの言われることは、何でもあなたのためにします」と約束しました。
ここに、ヨナタンのダビデに対する信頼を見ることができます。ダビデが自分に対して決して無茶なことを言わないこと、また、サウル王の王権を尊重する行動を取る以外のことはしないこと、ダビデがその線の中でヨナタンに、してほしいことを求めるはずだということを、ヨナタンは充分にわかっていました。
そう、大前提は、王とその下にある立場という、主がお立てになった秩序に従うということ、そして、その中で取るべき行動を取る、ということです。ダビデもヨナタンも、このような暴君に我慢がならず、革命、クーデター、武装蜂起を起こすにももっともな理由はあるはずです。しかしそれをしないで、最低限のことしかしないのは、王を王とすることにより、神を神とする生き方をともに徹底しているからです。ここに彼らの、神を恐れる姿勢を見ることができます。その点でサウルとの姿勢の違いはあまりに明白で、どちらの側が王にふさわしいかがこれではっきりしたというものです。
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