牧会コラム週報版 200 2024.9.15
「ダビデとヨナタン6」
ダビデがサウルにいのちを狙われていることがなお半信半疑だったヨナタンでしたが、新月祭の食卓を2日にもわたって欠席したダビデをとがめる問いを発したサウルに、ダビデの欠席した理由を話します。しかしそれを聞いたサウルは激怒し、ヨナタンの母親を侮辱することばをもって実の息子を侮辱する挙に出ます。
そしてサウルはヨナタンに、おまえがこのままでいるならば、王位はダビデのものになるのだぞ、あいつは死刑だ、と息まき、そればかりか、それに異議を唱えたヨナタンを槍で刺し殺そうとさえしました。ヨナタンはこれらの一切を、自分ではなくダビデに対する侮辱ととらえ、激怒して席を蹴りました。ダビデがこのような食事会に価値を一切見出さず、むしろ自分のいのちを救うために「ボイコット」したように、ヨナタンもまた、そしてダビデよりももっとはっきりした意思表明をもって、しかもダビデのことを思って「ボイコット」したわけです。
そしてヨナタンはダビデに、もともとダビデと示し合わせていたとおり、ひとりの少年を用いて弓矢を射て合図を出し、もう君はここにいてはいけない、逃げなさい、とメッセージしました。ダビデは物陰から出て、ヨナタンと号泣しながら、今生の別れをしました。その涙はもちろん、もう会えないかもしれないという悲しみも含まれていたでしょうが、ほかならぬヨナタンの父、主に油注がれたはずの王の、あまりにそれに反するむごい姿を見せつけられたゆえの涙でもあったことでしょう。
この友情が、ヨナタンにとっては父親、ダビデにとっては主君との関係にもまさって育まれたのは、だれが主にあって立てられるべき人であるかということが、ヨナタンにもダビデにもわかっていたからでした。お互いがお互いのことを、次の王、現在の王よりもよりふさわしく全イスラエルを治めるべき貴重な存在と見なしていて、だからこそその貴重な存在に対し、最善の忠誠を尽くそうとしたわけです。このように、お互いが王となるように自分の最善を尽くして仕えることこそ、主に最も喜ばれる友情のあり方ではないでしょうか。
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